海宝堂2〜魔女の館〜
状況は全く変わっていないし、何故3人がこんなことになってしまったのか、原因はまだわからない、それでも、自分だけが忘れられている訳じゃなくいというのが、逆に冷静さを取り戻させた。

「説明って、何から説明したらいいのか…」

冷静さを取り戻したとは言っても、自分のことを忘れられてしまったという衝撃はたやすく乗り越えられるものではなく。動揺を残したまま、頭を抱える。

「霧が深いが、船の上か?」

顔を上げると、ガルがこちらを見ていた。
いつもと違う視線に胸が痛む。
どうだ?ともう1度聞かれ、シーファははっとして答える。

「ええ、そうよ。マシュー号に乗って私達は旅をしていて…手がかりを元に今、ナツナ島という島の海岸に船をとめているの。
えっと…自分の名前はわかる?」

3人は互いの顔を見合わせながらうなづく。
しかし、生まれた場所や海宝堂を作ったこと、シーファと出逢う以前、以後の旅の経緯などはまったく覚えていなかった。

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