海宝堂2〜魔女の館〜
シーファの両手の動きに合わせ、海の水が盛りあがったかと思うと、竜のように姿を変える。水の竜はぐるぐると船の周りを周り、霧を一気に晴らす。
と、船首の先に女の影が現れる。
女は悔しそうに舌打ちをすると、シーファに背を向けた。

「逃がさないっ!」

竜で狙いをつけるが、女の動きは予想以上にすばやく、腰につけた小さな袋にかすったのみ。
しかし、その袋から赤色の宝石がこぼれる。
女は一瞬ためらった様子を見せたが、そのまま闇に姿を消した。

「あっ、待ちなさいっ!」

シーファは追おうとしたが、袋から落ちたルビーのような赤色の宝石が甲板で弾けたのに、足を止める。
割れた赤色の宝石から煙が立ち登り、まっすぐにニーナに向かって行くと、包み込んだ。

「ニーナ!」

煙はすぐにかき消え、目を丸くしたニーナがこちらを見ていた。

「大丈夫?何かされたんじゃ…」

「ううん、どうやら反対みたいだわ。シーファ。」

「そう、よかっ……?ニーナ?今…」

「あの赤い玉に記憶が入っていたのね、すっかり元通りよ。」

ニーナの笑顔はいつもと同じものだった。
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