海宝堂２〜魔女の館〜
人々はそれぞれの家の中で何をするわけでもなく、ぼーっと空を眺めている人がほとんどだ。
と、村の真ん中を流れる小川で水をくんでいる男の人に声をかけてみる。

「あの、すみません。私たちミチモラ島から来た旅の者ですけど、この島のことについて聞いてもいいですか？」

男は少しニーナの顔を不思議そうに見つめて、首を横に振った。

「すまないが、私はここの島のことは知らないんだ。役に立てなくて悪いね。」

そっけなくそう言うと、水をくんで足早に戻ってしまった。
きっと自分達のような旅の人か農作物を買い取りにでも来た商人だろうと、他の人を探す。

しかし、誰に聞いても、自分はこの島のことは知らない。というのだ。
まさかこの村にいる全員が島の外から来た人な訳は無く、嫌な予感を感じながらも、最後に話しかけた女の人に村の人達の居場所を聞くと、予感的中の答えが返ってきた。

「村の人どころか、この村にいる人達、皆、誰なのか知らないし、私がこの島にいる理由もわからないのよ。」

目の前にいるこの女の人はきっと村の人に違いない。しかし、彼女を始め、村の人々全員が、リュートやガルと同じ様に記憶を取られてしまっているのだ。
< 98 / 273 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop