嘘つき⑤【-sign-】
二人が寄り添う、只それだけの光景にドクリと心臓が音を立てる。締め付けられる胸が苦しくて逃げ出したい。
毅然としていたいと願う感情なんてすぐに崩れそうな程、脆いのに。
愁哉さんに関わらなければ、私は穏やかに過ごせるのかしら。それは、『逃げる』という事?それともこの状況を『受け入れる』という事なのか。
「ええ、それは分かったけど、彼女があなたの次のお相手?」
美弥子さんのオブラートに包まないストレートな言い方が怯む事無く愁哉さんへと向けられる。
――どちらにしても、
ただひとつ分かるのは、投げ出したい感情程厄介なものは無いということ。