嘘つき⑤【-sign-】
「…なんであんなのがいーかな」
恭平さんの腕が弱まった。優しい声は少し切なさを含んでいて、彼は瞳を細めた。
「俺の方がいい男だし」
軋む感情を見透かすように、恭平さんの口調はおどけてみせる。
「あんな堅物より絶対俺の方が面白いし」
「それに、百倍笑顔でいさせる自信はあるし」
「なにより」
「俺の方が琴音ちゃんを愛してるんだけどね」
そう言って笑った恭平さんを、私はきっと、ずっと、忘れられない。