嘘つき⑤【-sign-】

「まだ間に合うよ？」

俺にしとかない？とウインクして笑う恭平さんにつられて私も笑みが零れた。

その優しさが、嬉しい。

大切な人にはかわらない恭平さん。初めて会った時から、ずっと。確かに彼がくれた優しさが私を強くしてくれたのは事実だから。


「…ありがとうございます」



心から、あなたに想って貰えた自分が誇らしい、と思う事が出来る。




「…っとに。」


恭平さんが苦笑する。


「そんな笑顔見せられたんじゃかなわない。…まあ初めから、奪えるとは思ってなかったけどね」


小さく続けた低い声、くしゃりと髪をかきあげて、眉を下げた顔は私を見つめていたのに、すぐに視線を逸らせた。



「もーちょっと時間くれても良いだろ、狭い奴」



恭平さんが声を落としたその意味がよく分からなくて戸惑う。