嘘つき⑤【-sign-】
私と愁哉さんが婚約破棄したのは既に周知の事実で、毎日家に来ていた愁哉さんはもういなくて、彼に関わる事ももうない日々は、穏やかで、ゆっくりとしていて、
切ない。
「…またそんな顔して」
恭平さんの耳に優しい低い声が響く。
見上げた目線にいる恭平さんは、少し困った様に笑った。
その瞳が優しくてそれなのに力強くて、包むようで、戸惑う。
「…そんな目で…見ないで下さい」
そんな瞳で見つめられた事なんてない。
覚えているのは、
射抜く様に冷えた、透明な瞳だけ。