嘘つき⑤【-sign-】
鏡の前の疲れた顔。
この数十分で全部の気力を使い果たしてしまった気がする。
早くあの場を去りたかったのはもうひとつ訳がある。
首筋に飾られたネックレスにそっと触れて、ゆっくりとそれを外す。
…気付かれてしまったかしら、
ずっと俯いていたから愁哉さんの目線が分からない。だけど、胸の開いたワンピースを着た訳じゃないから見えないと思う。
何の、
何の意識もなく身に付けていたのは
愁哉さんから昨年頂いたネックレス。