嘘つき⑤【-sign-】
恭平さんが誘ってくれたのは友達のフォトグラファーさんとの身内だけの小さなものらしい。
『馬鹿な奴ばっかりだし堅苦しくないから、一緒に行こう』
そう笑った、恭平さんの口調に気を許した方達とのパーティなのだろうとあたしも微笑んだ―――――
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大きな鏡台の前、重厚に薔薇の模様で装飾された上品なデザインの中に浮かぶ顔は、いつもと同じなのに、酷く疲れているように見える。
事実、疲れているのかもしれない。
感情なんて簡単に消えてくれたら良いのに。
塗り替える様にページを上書き出来たら記憶など曖昧なものになってしまうから。
引き出しの奥にしまってある小さなピンク色のジュエリーケース。
隠されているのは、左手の薬指にぴったりはまるプラチナリング。
対になるあの人の最後の瞳を思い出して、痛む程、締め付けられる胸に、あの日触れてしまえば良かったと、そう思っても、きっと触れる事は出来なかったけれど。