嘘つき⑤【-sign-】

そうして、週末、夕刻の時間を知らせる鐘が鳴る頃、私はスゥと小さく息を吐く。

アクアマリンとダイヤの石にクロスされたネックレスに、シンプルなドレスはブラック。エスコートするのは恭平さん。

ただ、予定が少し変わってしまったのは、会社でも開かれる祝賀会の日にちが重なった為。
今回は中小企業を買収して合併を兼ねたもの。恭平さんは昔その吸収された企業のイメージフォトを撮った事もあって、専務との付き合いは長いんだとか。
断るつもりでいる恭平さんにあたしは行くように諭す。そういう付き合いが大事だって事はこの場所にいれば嫌でも分かるから。

恭平さんは自由な方だけど、折角日本にいるのだから、顔くらい見せろとう専務さんの言葉もあって渋々、少しだけならと首を縦に振った。


だから今回は大原グループの娘としてでなくて、ただの『大原琴音』として。

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