嘘つき⑤【-sign-】
隣に当たり前のように立つ天童さん、あたしは、それを見て無意識に唇を噛む。
こんなに、嫉妬深くて醜い自分が嫌い。揺れない、ぶれない人になんてやっぱりなれる筈がない。
「花梨さん?」
結城さんの穏やかな声で、あたしが無意識に彼の腕を掴んでいたのだと気付く。
「そんなに必死に掴まなくても逃げませんよ」
悪戯に笑う彼、ほら、あたしは本当に最低だ。
視線を戻さない様に今度は目標もないまま足を動かす。
また、
少し動揺したのは
見覚えのある細くてしなやかな後ろ姿を見つけたから。