嘘つき⑤【-sign-】
■大原 琴音side■
◇琴音side◇
会場の流れに瞳が疲れてしまって、何となく視線を彷徨わす。
体が――
ドクンと悲鳴を上げた。
…私は駄目ね、
ブラックのスーツを身に纏って、この距離からでも分かるのは彼がまるで『別格』のオーラを放っている事。寄せ付けないのに惹かれる、そんな不思議な魅力とスラリとした長身に、涼しげな目元。整い過ぎた綺麗な顔立ち。
あの日から何ひとつ変わらない愁哉さんを、容易に見つけてしまう。
その横に今は誰が並ぶなかなんて考える必要もないのに。
広い会場にざわつく人並みは、香水の匂いと、独特の空気を運ぶ。白いベールにドレスアップされたテーブルが決められた場所に位置づいて、談笑する男女の中、あたしは一人また貼り付けた笑顔を作った。