紫御殿†Purple heart
そうしたら、貴方は

『可愛い』と

言ってくれただろうか?

まだ、洋服の事を
気にしている私に

貴方は
聞こえるか聞こえないか
ぐらいの微かな声で告げた。

「その服、可愛いよ
 お前に似合ってる
 だから、もう、気にするな」

照れた表情を見せる貴方・・・

欲しい言葉を、貴方がくれた。

私は、とっても嬉しくて

貴方に微笑んでみせた。

そして、貴方を見つめる。

あなただけを・・・

彼女の瞳は、言う。

『貴方が好き』

教室の後ろの棚に掛けられた
傘を取り

私は、貴方に差し出した。

「やっと、返せる・・・
 シドウ先生
 ありがとうございました」

そう言って、一礼する

彼女の長い髪が前へと

流れ落ちた。
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