紫御殿†Purple heart
そう言って貴方は
羽織っていたチェック柄の
青いシャツを脱ぎ

そのシャツで私の頭を
拭いてくれた。

貴方の、甘い香りがする。

「先生、痛いよ」

「黙ってろ」

行き交う人々が見つめる中
貴方は、私の頭が前後左右に
揺れる程に、力強く、手早く
両手を動かしながら拭く。

「もう、いいよ・・・」

自分の頭(髪型)が今
どうなっているのかと考えたら
つい、笑みが零れてしまった。
 
「何、笑ってる?」

「何でもないよ」

さっきの男性は、そっと優しく
私の顔を拭いてくれたのに
貴方ときたら、人の事を
子供やペットのように扱う。
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