紫御殿†Purple heart
窓を開けていた為に、助手席の
ドアはもちろん、シートまでが
濡れていた。

「開いてるから後ろに乗って」

そう言って、貴方は運転席に
乗り込んだけれど私は
後部座席のシートまで水で
濡らす訳には行かないと

助手席のドアを開けて
そのまま、シートに座った。

「それ、貸して」

貴方からシャツを受け取って
私は、ドアを軽く拭く。

「ありがとう」

「先生、ごめんね・・この服」

汚れて、草臥れた服。

「いいさ」

車を操作する貴方を

私は見つめる。

左手、薬指の指輪が私の胸を
締め付ける。

もう、貴方の事なんて

好きじゃないけど

二人きりは、やっぱり苦しいよ
< 18 / 578 >

この作品をシェア

pagetop