紫御殿†Purple heart
「雨、止んだな」

「本当、先生
 ほらっ、あそこ
 空が明るくなってる」

「ああ」

この歩道橋を越えれば

家はもうすぐ。

私は、借りた黒い傘を
忘れないように確認する。

「レイ、傘持ってるくせに
 どうして、そんなに
 濡れるんだ?」

「この傘なら、親切な人が
 貸してくれたの
 とても素敵な人だった
 背なんてスラッと高くて
 アッちゃん・・・
 
 先生なんかより
 ずっとかっこいい」
 
前を見つめて運転しながら
貴方は言う。

「昔みたいに、あだ名で
 呼べばいい
 ここは学校じゃない」
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