紫御殿†Purple heart
「はい」

浅緋と交わした唇・・・

いずるに、合わせる顔が無い
私は、優しく微笑んでくれる
彼から視線を逸らして
逃げようとした。

「待って、レイ」

振り返る私を、いずるは手招く

呼ばれるままに、貴方の傍へ
近寄ると、彼はポケットに
手を入れた。

そして、取り出すと指の隙間
から見える青色。

「これ、忘れ物
 
 洗面所にあった」

それは、長い髪をまとめる時
に使うシュシュ。

シフォン生地を使って、私が
手作りしたシュシュが今
貴方の広げた掌の上にある。

「ありがとう」
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