紫御殿†Purple heart
貴方を心配させてはいけない。

私は微笑ながら一度だけ
頷いた。

そして、胸元で
小さく手を振った。

本当は
大丈夫なんかじゃない。

いずるの胸に、頬を寄せて
頭を優しく撫でてほしい。

本当は
ここから逃げ出したい。

音楽室を出て、教室へと向かう
私の手に触れる、大きな手。

振り返る私の瞳に
浅緋の姿が映る。

『私と浅緋

 何の関係も無くなる』

「レイ・・・」

浅緋の顔を見て
意味も無く、溢れる涙。

浅緋の手の温もりに
意味も無く、零れる涙。

「ごめんな・・・」
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