紫御殿†Purple heart
私は、涙を手で拭い
黙ったまま首を左右に振った。

いずるは、私の隣にもう一度
座って、私の顔を覗き込む。

貴方が帰ってしまう

寂しくて、居ても立っても
いられない私は

いずるの肩に腕を回して
勢いよく、飛びついた。

私の全てを受け留めた貴方は
ベッドに倒れる。

今度は私が、貴方を上から
覗き込む。

前へと流れる髪を片手で
掻き揚げ、濡れた瞳で
貴方を見つめる。

「レイ?」

そして、貴方に口づけた。

何度も何度も、口づける。
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