紫御殿†Purple heart
車を降りる私の後ろを
いずるを乗せたタクシーが
走り出す。

私へと、一歩ずつ
浅緋が近づいてくる。

その表情は、青褪めている。

その瞳は、怒っている。

貴方の手が、私の手首に
触れた。

貴方は、私を引き寄せて

その腕で包み

その胸に抱く

優しく、触れる。

「お前、何やってるの?
 
 いずると
 縒り、戻すの?」

貴方の声・・・

元気がない。

「そんなに
 私を失うのがこわい?」

貴方は、黙って頷いた。

「私も、こわいよ・・・」
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