紫御殿†Purple heart
「・・・
 私を好きになった相手が
 私を失って傷つく姿
 必死になって、私を
 追いかける姿を見る事が
 堪らなく楽しいの

 ただ、それだけのこと」

私は、彼女を見つめる・・・

ちょうど、その時、出張から
早く戻った浅緋が美術室の
前に現われる。

開かれたままの教室の
ドアから漏れる声

浅緋の耳へと届く・・・

「本当の愛を知らない
 貴女は可哀想な人ね
 
 自分の事を
 好きになってくれた人に
 私ならそんな事できない
 
 だって
 好きな人の愛が、自分に無い
 好きな人の愛を、得られない
 
 そのことが
 どんなに苦しいか
 どんなに寂しいか
 私は、知っているから・・・

 本当は、貴女だって
 知ってる」
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