恋咲
こいつが猫被ってるってわかったのは入学して1ヶ月後ぐらいのとき。
俺が部活終わって教室に忘れ物を取りに行ったときだった。
「あ~、疲れた」
汗を拭きたいのにタオルがない。
教室に置いてきちまうなんてアホだろ、俺…。
俺は教室にタオルを取りに行くために4階の廊下を走ってる。
俺は1-Aだから1番奥なんだよな…。
メンドくせぇー。
夕陽が廊下をオレンジ色に染めている。
他のクラスは電気が消してあるのにAクラスだけは明るかった。
何でだ?
誰かいんのか?
Bクラスまで来てAクラスから声が聞こえてきた。
「っざけんなよ!帰れねーじゃねぇか!!」
「いいから私の話聞いてよ!」
なんか揉めてる。
しかも学級委員らの声だし…。
でも竹井ってこんなんじゃねぇよな…?
いっつも落ち着いてて良い奴な感じだった気がする。
…ん~!
教室ん中が見たい!!
何やってんのか気になる。
まさか竹井が小野に押し倒されてんじゃ…。
俺はそんな事を考え、顔がニヤついてしまう。
…開けちゃえ!
思い切って扉を開けた。
ガラガラッ
「「!?」」
二人共驚いてバッとこっちを見てきた。
…ちっ!
俺は心ん中で舌打ちした。
その訳は…
俺の想像と違っていたからだ。
つまんねぇの。
学級委員二人はなんか話し合いをしているようだった。
でも小野は慌てていた。
何だ、こいつ。
キモっ…。
俺は普通に酷い言葉を心ん中で呟いていた。
「ゆ、優馬!?さっきの聞いてた…?」
さっきのってなんだし。
しかも俺の事呼び捨てにしてるし。
俺、お前と話した事ねぇんだけど?
俺は「さっきって何が?」と聞こうとして口を開いたが竹井の言葉に止められた。