恋咲

俺の言葉にビクッと肩をびくつかせた。
「村田…くん？」

カタカタと身体を震わせていた。
怯えているみたいに。

「南…美…？」
俺は南美が心配になった。
その小さな身体を俺に預け今にも泣きそうだったから。

…と思ったら、泣いてしまった。
ポロポロと声も出さずに涙だけが流れていた。

「…南美？」
俺が声をかけると、
「…ごめん。ちょっと昔を思い出しちゃっただけだから…」
顔をゆっくりと上げフワッと柔らかい笑みを見せた。
瞳に涙を溜めながら。

その笑顔は俺を心配させないため？
それとも泣くほど良い思い出だったのか？
ガタガタ震えるほど？
…そんな良い思い出、何処にあんだよ！
あるわけない。

俺は抱き締める力を強くした。
「竹井くん！？」
南美は驚いていたが俺は更にぎゅっと力を強めた。

「…竹井…くん？」
「…ごめん！」
「え？」
いきなり謝られて戸惑った様子の南美。

「…デリカシーのない事聞いて」
「…」
南美は黙り込んだ。

「でも俺！心配なんだ…。震えて泣いて、良い思い出なわけがないと思ったから」
ホントに…
心配なんだよ。

「…あり…がと」
まだ泣き続ける南美。

泣かないでくれ。
お前には笑っていてもらいたいんだ。
あの笑顔で、俺に笑いかけてくれよ。

でも…。
泣いて泣いて、涙なんて枯らせてしまえよ。
もう2度と泣かないように。

俺は複雑な気持ちになった。
俺はどうすればいんだ？