恋咲
「…友…美?」
瞳を見開いてあたしの名前を呟いた。
あたしは咲月の顔を見て更に驚いた。
瞳は腫れぼったく、泣きはらしたみたいになっていた。
それでも止まらなかったのかまだ瞳が潤んでいた。
「咲月?!どうしたの!?なんで泣いてるの!!」
あたしは早口になっていた。
泣いてる理由がわからない。
でも、何かあった事は確かだ。
絶対に…。
理由が聞きたくて咲月の名前を呼ぼうとした瞬間…
『間もなく下校時刻になります。校内にいる生徒は速やかに下校して下さい』
とアナウンスが入った。
スピーカーの隣にある時計に瞳をやり、初めて時刻が6:55になっている事に気付いた。
もう帰らなければいけないと思い、あたしは咲月の二の腕を掴んで、立たせた。
「…咲月。とりあえず学校出よ?ここじゃなんだし、あたしの家行こっか」
と提案すると、
「えっ。でも…」
と口ごもっていた。
「……あっ。そっか。…海斗さんにはあたしから連絡しとくよ」
とウインクした。
「…ありがと。でも…」
まだ何か戸惑っている様子。
「大丈夫!泣いてた事は言わないよ」
あたしがそう言うと、パァと顔を明るくさせ「ありがとう!」と微笑んだ。
どうして咲月は泣いてるの?
何があったの?
あたしは咲月の手をぎゅっと握った。
それに気付いた咲月もぎゅっと握り返してくれた。
あたし達は学校から出た。
あたしの家へ向かうために。
…咲月を悲しませたくない!
もう二度と…。
あんな思いしてもらいたくないよ。