恋咲
…え?!
何で睨まれてんだろ、あたし…。
てかお母さん怖すぎ。
「…友美、ちょっと来なさい?」
笑ってるけど、後ろに鬼が…。
これは、幻覚ですよね!?
「咲月ちゃんは待っててねぇ?」
…なんで咲月の時は満面の笑みなのー?!
「はい!」
咲月は何にもわかってない様子。
この天然系美少女め!!
呑気な咲月を背に、あたしは玄関からリビングへと連れていかれた。
「…友美」
「はっ、はい!」
あたしは背を向けているお母さんに身体が強張った。
ピンッと背筋が伸び、“お母さんは怖い”と再確認させられた。
「そこは普通、咲月ちゃんでしょーが!」
振り向きざま、そう言われた。
はっ?
お母さんの一言で緊張から解き放たれたあたしは口がアンッグリ開いていた。
お母さんは何を言ってんの…?
「…何が?」
不思議なお母さんの発言に質問したあたし。
「だから!お菓子を取りに来るのは、普通咲月ちゃんでしょ?!」
“咲月ちゃん”を強調された。
「は、はぁ…」
曖昧に返事をするあたしには気をとめずお母さんはどんどん話し続けた。
「お母さんは、咲月ちゃんの事が大好きなのは知ってるでしょ?」
そりゃあもう。
重々承知してますよ。
あたしはこくんと首を縦に振った。
「…じゃあ、普通ならそこは。『咲月とお母さんの仲を更に良くするためにここは咲月に頼もうかな』とか思って、くれない?」
…ため息混じりの発言止めてもらえません?
お母さん…。
もう呆れるしかなかった。