恋咲

ガチャ
扉が閉まる。

「じゃあ、ここ座って」
あたしの目の前を指差し、手招き。
「うん、遠慮なく」

コト
テーブルの上にお皿が置かれる。
星の形をしたクッキーをパクッと口の中へ放り込んだ。
咲月はハートの形のクッキーを手に取りパクッと口にした。

ごくん
クッキーを噛み砕き、飲み込んだ。
「で、何があったのか話してくれる?」
少し身をのりだし、じっと咲月を見る。

ごくん
咲月もクッキーを飲み込んだ。
「…うん」
少し躊躇いを見せたが、こくんと頷いた。

それから…
ちょっと言葉に詰まったり、また少し泣きそうになったりしたけど。
無事に今までの事を話してくれた。

竹井に告られた日から今日までの事を話してもらった。
…ま、昨日と今日の話だけど。

それにしても…。
「竹井がそんな奴だったなんて!咲月と仲良くする資格ない!!」
興奮するあたし。

咲月の事、何も分かってない!
咲月の事が好きなら、咲月を泣かせるような事しないでよ!
咲月の…昔を知らないから、出来るの?

ぎゅっ
「友美!?」
手がいろいろな方向に動いていた。
「…咲月。あたしが、守るから」
あたしは今にも消えそうな声しか出なかった。

ピタッと咲月の手の動きが止まる。
そしてゆっくりと、あたしの背中に手を添えた。

「ありがと、友美。でもね。友美が泣いてくれなくて、いいんだよ…?」
そう…。
あたしは声を殺して、泣いている。
下唇を噛み締めて。

違う…違うの。
あたしは首をふるふる横に振った。
「?違うの?」
咲月の問いかけに、首を縦に動かした。
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