恋咲
「…そっか。じゃあ、元気出して?友美が笑ってくれてないと調子、狂っちゃうよ」
あたしはゆっくりと顔を上げた。
優しく微笑んでくれている。
でも瞳には、涙。
上の電気で涙がキラッと光っていた。
あたしは手の甲で涙を拭いながら、フッと自分のことを鼻で笑った。
「…咲月を慰めるつもりが、逆に慰められちゃった」
「友美…。友美は優しいから、私のことで笑ったり泣いたり…してくれるんだよね。私は、友美のそういう所。大好きだよ」
あたしの瞳に溜まった涙を、わざわざ自分のスカートからハンカチを取り出し…拭ってくれた。
あたしも。
咲月のそういう、人のことを1番に考えている所……大好き。
心の中で呟く。
恥ずかしくて、口には出せないよ。
「…ねぇ、友美。こんな時に何なんだけど…クッキー食べたいな」
何を言い出すかと思えば。
「さっきからいい匂いが」
照れ笑いをする咲月。
あたしは思わず吹き出してしまった。
「プッ。そんなにお腹空いてんの?」
「お腹は…」
と言いかけたその時。
ギュルル。
とっさにお腹を隠した咲月。
頬が赤く染まっている。
可愛い♪
あたしは笑うしかなかった。
咲月は、こんな時にって思っているかもしれないけど…。
あたしにとっては、咲月の行動ひとつひとつで気持ちが和らぐ。
「食べても…いい?」
もじもじ俯きながら、聞いてくる。
「もちろん!」
お皿を咲月の前へ置く。
パァと顔を輝かせて、あたしの顔とクッキーを交互に見つめる。
あたしがニコッと微笑むと、クッキーをパクッと口に頬張った。