恋咲
あたしが扉を開けて、後ろにいる咲月が扉を閉めた。
トントン
階段を降りていく。
玄関では、海斗さんが待っていた。
「咲月!友美ちゃん!」
「お兄ちゃん」
「海斗さん」
あたしと咲月の言葉が重なった。
「帰るか、咲月」
「うん。でもちょっと待って。その前に」
クルッとお母さんの方に向き直った。
「クッキー、すっごく美味しかったです♪ありがとうございました。また来ます」
ぺこっと頭を下げて感謝の気持ちを表した。
「咲月ちゃんったら。そんなにかしこまらなくてもいいのよ~?」
咲月の行動に、少し慌てている様子。
「いや、でも。お礼はきちんと言っておかなきゃ、と思ったので…」
苦笑いを浮かべている。
目の前にいるのはホントに咲月?
疑ってしまうほど、礼儀正しかった。
「…ホント良い子ね~」
咲月が良いコすぎて、戸惑い気味。
「でも、普通にしてくれてる方がいいわ」
「そーですか?」
咲月はどうしようかと迷っていた。
「うん。だから、普通にしてて?じゃないと…クッキー作らないよ?」
そんなことで?!
咲月、慌てまくるだろーな…。
案の定、
「えっ!?嫌です~!おばさんのクッキー、食べられないなんてぇ!」
慌ててる。
つか、今にも泣きそうなんですけど…。
「じゃあ、普通にしてて?」
「わかりました!」
即答!
さすが咲月。
食べ物には、容赦なく食いつく。
2人の間には入れないので、海斗さんを横目でチラッと見た。
腕時計を見て、少し困った顔をしていた。
そうだ!
時間…。
「咲月。そろそろ帰った方がいいよ?」
あたしの言葉にはっとした咲月は、海斗さんに近寄った。
「ごめん、お兄ちゃん」
「大丈夫」
海斗さんはニコッと笑った。
は、鼻血出そう…。
つか倒れる。
と思った時…。
「友美、帰るね。また明日♪今日はホントにありがと!」