恋咲

「っでも…」
「竹井くん!」
ずいっと竹井くんに近寄る。

「…!」
真剣な眼差しで、私も歩美ちゃんを探す!という思いを伝える。
竹井くんは驚いていたけど、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。

「……」
「…」
お願い…!
「…はぁ~。しゃ~ねぇなぁ」
「ホント!?やったぁ!ありがとー、竹井くん♪」
嬉しさのあまり抱き着いてしまっていた。

「おわっ!南美!!?」
「何なに~?見せつけてくれちゃってー!」
「「!!」」
友美の言葉で我に返った。

バッと同時に離れ、同時に顔を背けた。
「と、とりあえず。俺は、歩美ん家に行ってくる」
「あ、うん」
「いなかったら、連絡する」
「わ、わかった」
「じゃ…」
ガラガラ
竹井くんは1人で教室から出て行った。

私は、去っていく竹井くんを瞳で追っていた。
すると…。
後ろから視線が。
「……友美!」
バッと振り返る。
「なぁに~?」
ニヤニヤしてる。
私は顔を真っ赤にしながら、
「な、なんでもないんだからね!」
…我ながら説得力がないと思う。

友美は笑いを押し殺すのに必死だ。
「かぁわいい~♪」
なんて悪戯っぽく言ってくる。
「う、嘘じゃないもん!」
「誰もそんなこと言ってないけど~?」
うぅ~、確かに。
「そう、だけど……」
さっきとは変わって私の声は小さくなっていった。
最終的に俯いてしまう。

「……咲月?」
「…何?」
「咲月はさぁ~。竹井のこと好き?」
「なっ!」
友美の言葉に驚いてバッと顔を上げた。

!!
すごく真剣な瞳。
なんでそんなこと聞くの?
なんで…切なそうにしてるの?
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