恋咲
その音を聞いた友美は、さっとスカートのポケットから水色のケータイを取り出した。
パカッと開き、通話ボタンを押す。
「はい、もしもし。竹井?」
ビクッ
竹井くん?
“竹井”という言葉に反応してしまった。
チラッと見たが、友美は気づいてない。
なのに、顔が熱を帯びていく。
は、恥ずかしい!
変に反応しちゃって。
友美が見てたら絶対にからかってきてたよね…!?
あ~、良かった!
友美が見てなくて。
私が安堵のため息をついた途端。
「うん、わかった。すぐに行く!」
不安そうな顔をした友美がケータイから耳を離した。
「歩美ちゃんは?」
「いなかったって…」
「嘘…。早く探さなきゃ!」
「うん、行こう。咲月!」
力強く頷いた。
鞄を持って、教室から出た。
ガラッ
お願い!
無事でいて…。
歩美ちゃん!!
息を切らしながら走り続ける。
下駄箱まで来ると靴を履き替え、また走る。
外は、少し暗いオレンジ色。
もうすぐで真っ暗になる。
真っ暗な中で女のコ1人じゃ…危ない!!
急がなきゃ!
学校の門を潜り抜ける。
でも、道がわからない。
一旦止まり、クルッと振り返る。
「ハァ…友美。どっち行けばいいかな…?」
「竹井が…歩美ん家に来いって言ってた。ハァ」
2人共、息が切れている。
「私…歩美ちゃん家わかんない…」
「あたしわかるから、着いて来て!」
こくんと頷く。
苦しい…。
でも、頑張らなきゃ!
歩美ちゃんのためだもん。
友美の後に着いて行く。
もちろん走って。
友美も、歩美ちゃんのこと大切に思ってる。
だから必死なんだよね。
私も歩美ちゃんが大切だから、絶対に見つけようね!
友美の背中を見つめながら、心の中で呟いた。