恋咲

竹井くんは私に背を向けていて顔が見えない。

「…何て?」
私が聞くと竹井くんは私に背を向けたまま口を開いた。
「…好きだ…ってな」
…えっ?
ええぇぇぇぇぇ!?
じょ、冗談はやめてほしい。

「な、なんでそんな事。嘘…だよね?」
私がアワアワしていると竹井くんがバッと振り向いた。

「…好きだ…」

真剣な顔で言った一言はあたしを真っ赤にするのには十分で。

ボッと沸騰したかのようになってしまった。
みるみるうちに私の顔は熱くなっていった。

「…クククッ」
…えっ?
な、何で笑うの!?

「その顔…」
えっ?
「…他の奴には見せんなよ?」
えっ?
えっ?
…何で~?

私の思ってる事がわかったのか、
「…とりあえずダメな」
なんて言った。

意味がわからなかった。
なんでダメなの?

「……じゃ」
竹井くんは私から背を向けて教室から出て行った。
ガラガラッ

竹井くんがいなくなった教室はしーんと静まり返っていた。
私はポカンと口を開いていた。

開いた口が塞がらない

とはまさにこの事を言うのだろう…。

…告白なんて嫌ってほどされた。
『好き』なんて聞きあきたぐらい。

でも、なんでだろ?
竹井くんの好きには顔が熱くなってしまった。

あんなに真剣な顔されたからだよね!?
…うん、そうだよ!
べつに恋したわけじゃないっ!

言い聞かせるように何度も何度も心の中で呟いた。
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