恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
【prologue】
『その条件、飲みます。その代わり約束は守ってください。
あたしが記憶を取り戻したら、その時は―――……』
契約の証として首筋に走る痛み。
意識が遠のいていくのが自分でも分かった。
あたしの勝手な行動を、紫貴(しき)は怒るかな。
紫色のキレイな瞳を、つらそうに歪めて。
紫貴のあの表情は、どうしょうもなくあたしを切なくさせる。
……大丈夫。
そんな顔しないで。
あたしは絶対また紫貴を好きになるから―――……。
だから。
だから、待ってて。
―――その日、あたしは一番大切な人の記憶を失った。