恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
【prologue】



『その条件、飲みます。その代わり約束は守ってください。

あたしが記憶を取り戻したら、その時は―――……』


契約の証として首筋に走る痛み。

意識が遠のいていくのが自分でも分かった。


あたしの勝手な行動を、紫貴(しき)は怒るかな。

紫色のキレイな瞳を、つらそうに歪めて。


紫貴のあの表情は、どうしょうもなくあたしを切なくさせる。



……大丈夫。

そんな顔しないで。

あたしは絶対また紫貴を好きになるから―――……。



だから。

だから、待ってて。



―――その日、あたしは一番大切な人の記憶を失った。





< 1 / 343 >

この作品をシェア

pagetop