恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
『では、今を持ちまして来月からの定期的な挨拶運動を決定します』
ただ渡された台本を読むような口調で言った藍川が、マイクを切って壇上脇に置いてあるパイプ椅子に座る。
……あたしの隣に。
そして底光りする瞳であたしを捕らえると、口許を少しだけ緩めて微笑んだ。
「さすが副会長。完璧だった」
「世話のかかる会長を持ったので、仕方なく。
……っていうか、本当にいい加減自分でやってよね。あたしなんかとは比べ物にならないくらい頭いいんだから」
キレイな微笑みが向けられて、思わず心臓が跳ねる。
それを誤魔化そうと口を尖らせて続けた。
「大体、推薦で会長についた人なんか前代未聞なんだからね。
それだけ人気があるって事なのに、仕事をあたしに押し付けるのはやめて」
「推薦のシステムを取り入れるなら、それを拒否する権利も入れるべきだろ。
推薦なんて聞こえはいいかもしれないけど、祭り上げられてる気分だ」
淡々と話す藍川が、そこまで言ってからあたしを見る。
そして呆れるように笑みを零した。