恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
ぼそっと呟かれた言葉を聞き返すと、さっきとは違う言葉が返ってくる。
「……怖がらせようとなんかしてない。処刑も事実だ」
そう言った藍川の笑みにはイタズラが混ざっていて、それを見て少し安心した。
「ほら、そうやってまた怖がらせる。
……いいよ、別に。あたしは誰にもバラしたりしないから」
口と尖らせて言ってから、疑問だった事を聞く。
「藍川は、あたしを怖がらせて逃げさせたいの?
自分から離れさせたいの……?」
微笑むだけの藍川は、答える気はないみたいだった。
だけど……、そんな反応が返ってくるんじゃないかって事も、なんとなく分かってた。
そして。
藍川が微笑むだけの時は、それを肯定してるんだって事も。