恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「怖くないのが、自分でも不思議だよ。
あたし、ホラー映画なんか見た事ないし、お化け屋敷だって入れない女なんだよ。
それなのに……藍川を怖いって思えない。離れるなんて、考えられない。
なんで……?」
聞いたのは、なんでだか藍川がその答えを知っている気がしたから。
藍川はつらそうに微笑んで、あたしの頬に手を伸ばす。
あたしは、戸惑いながらもその手に自分の手を重ねた。
藍川の真っ直ぐでいて、どこか切ない瞳があたしを捕らえる。
「くるみは優しすぎる。
俺なんか気にしないで普通に生きていてくれれば、それでいい。
……―――もう、十分だ、くるみ」
あまりにつらそうに言うから、あたしはそれ以上追及できなくなってしまった。