恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
一つ開いてたボタン。
二つ目を外されて、そこで慌てて藍川の手を掴んだ。
「ちょ……、からかわないでってば!」
「からかってなんかない。俺に安心しすぎるのが悪いんだろ。
ヴァンパイアだってわざわざ教えたのに」
「だって、」
「ヴァンパイアなんかに、近寄るとどうなるのか……、教えてやる」
意地悪に緩められた口許から、わずかに歯が光った気がして、ドクンと心臓が跳ねた。
藍川を信頼してる。
それは変わらないのに、実際に目の前にすると緊張が走って恐怖を感じる。
そんなあたしの気持ちに気付いたのか、藍川は目を細めて微笑む。
「もう後悔してるだろ。俺を信じた事を」
まるでそうであって欲しいみたいな藍川の言葉。
誘導尋問みたいに感じるそれに、あたしは怖がりながらも藍川をキっと見上げた。