恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


―――なのに。

確かに覚えてる。


初めての時の緊張と少しの怖さ。

でも、それを上回る嬉しさと、相手を好きだって想う気持ち……。


「……あたし、誰としたの?」


びっくりしすぎて思わず声に出すと、それを聞いた藍川が、信じられないっていうような顔であたしを見た。


ううん。

もしかしたらもっと前からそういう顔をしてたのかもしれないけど、それに今初めて気がついた。


ポーカーフェイスの藍川がこんな顔をした事は、以前にも一度だけある。


前、夜の散歩で会った時。

その時も確かこんな顔してた。


夜道を歩きながら、忘れている記憶が藍川に関係してる気がするって言った時にも、確か……。


藍川をじっと見つめていると、それに気付いた藍川がハっとしてあたしを見る。


そして、気を取り直したみたいに微笑んだ。






< 112 / 343 >

この作品をシェア

pagetop