恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


ここに来た時よりも暗さを増した、窓の外にある空。

だんだんと悪くなる視界の悪さが、余計にあたしを追い詰める。


「あた、あたしの身体、すっごく固いんだから!

ほらっ! くるみって名前通り、本当にクルミみたいに固くて、かじったりしたら自慢の牙が折れちゃうんだからねっ!」


慌てて訳の分からない事を言い出したあたしに、藍川がふっと笑う。

その吐息が耳にかかって、くすぐったいような感覚を残した。


「それは困るな。でも、そんな震えた声で言われても説得力にかける。

それに……」


そこで言葉を切った藍川は、続く言葉を甘い声色であたしの耳に注ぎ込んだ。


「試してみたくなる。こんな柔らかそうな肌が、本当に固いのかどうか……」


そう言われて、怖さが増したのは確かだった。

緊張だってハンパじゃないし、なんかもうわけがわからなくて泣きそうだし。



―――だけど。

怖いのは藍川じゃない。






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