恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


あたしの言葉に、少しだけ戸惑ったように微笑むだけの藍川に、更に告げる。


「だから、怖くない。……藍川は、全然怖くなんかないよ」


『怖くない』

もう何度それを伝えたんだろう。

何度も何度も……。

何十回も伝えたような気がして、思わず顔を歪めそうになった。


失った記憶の中でも、あたしは藍川にそう言った―――……?


『あたしは、全然怖くない。怖いなんて思わない。

……だから紫貴も怖がらないで』


何度も……

あたしは、藍川に―――……。



だけど、そんな疑問が浮かんできた時、藍川があたしの頬に手を添えた。

ハっとした途端、真剣な瞳に気付いて息を呑んだ。





< 119 / 343 >

この作品をシェア

pagetop