恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
あたしの言葉に、少しだけ戸惑ったように微笑むだけの藍川に、更に告げる。
「だから、怖くない。……藍川は、全然怖くなんかないよ」
『怖くない』
もう何度それを伝えたんだろう。
何度も何度も……。
何十回も伝えたような気がして、思わず顔を歪めそうになった。
失った記憶の中でも、あたしは藍川にそう言った―――……?
『あたしは、全然怖くない。怖いなんて思わない。
……だから紫貴も怖がらないで』
何度も……
あたしは、藍川に―――……。
だけど、そんな疑問が浮かんできた時、藍川があたしの頬に手を添えた。
ハっとした途端、真剣な瞳に気付いて息を呑んだ。