恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「なんでもないっ! ……あ、ごめん。本当になんでもなくて……」
顔色の変化を見逃さなかった草野くんに聞かれて慌てて否定する。
だけどそれはあまりに過敏反応しすぎていて、逆に草野くんに疑問を与えたみたいだった。
不思議そうに見つめられて、あたふたと言葉を探す。
「その、昨日ちょっと自分で噛んじゃって……」
「―――まだ消毒が必要だった?」
どうにかこの熱い頬に説明をつけようとしていた時。
不意に上から声がした。
低く艶のある声に、頭よりも胸が先に反応してその持ち主が誰かを伝える。
最初は、藍川を好きなんだって受け入れるのがやっとだった。
それどころか、否定したくて仕方なかった。
勝手に反応する胸も、藍川だけを特別に思わせる目も耳も、全部がおかしいんだってそう思おうとしてた。
だけど、それは素直に反応する身体を前に手も足も出なくて。
こうしてドキドキするごとに藍川への気持ちが高まってる。
もう、どんな理由をつけても誤魔化せないくらいに大きく育ってる。