恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「藍川……っ」
見上げた先には、想像通り藍川がいて。
あたしのすぐ後ろに立って、斜め上から覗き込むようにして、あたしの唇を見つめていた。
「もっと時間をかけて消毒するべきだったな」
「近いっ、近いから!」
真顔で言われた言葉にまた顔が熱くなるも、その様子を見ている草野くんの存在を思い出して、藍川の胸を肘で押す。
いつもなら、それぐらいのあたしの反抗じゃ表情を崩さない藍川。
なのに、なぜか眉を潜められて、軽く睨まれて。
肘がみぞおちにでも入っちゃったのかと思って見ていると、不機嫌そうな表情のまま意外な言葉を返された。
「今こいつだって同じくらい近づいてたろ」
「……は?」
思わず声が漏れたけど、そんなの気にしないで藍川を見る。
不貞腐れた様子の藍川は、むすっとした顔のままあたしを見ていて。
その様子にますます首を捻りたくなった時、ぼう然としていた草野くんが思い出したように口を開く。