恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


そう言われて、あたしは口を尖らせる。

藍川を心配して以外、あたしがあんなに焦る必要がどこにあるんだろ。


だけど、考えているうちに藍川のバツの悪そうな顔に気付いて……。

藍川の様子を見ているうちに、その理由が思い当たる。


「あたしが草野くんに好意を持ってると思ったの? 

草野くんに、藍川との関係を変に疑われたくないから必死に誤魔化してるとでも思った?」


ただ微笑むだけの藍川は、あたしの言葉を肯定しているも同然なのに、それには答えずに違う言葉を向ける。


「それもいいだろ。くるみみたいな女は、大事にされるべきだ。

本来、そうあるべきなんだよ。

俺なんかじゃなくて……、人間の男の隣にいるべきだ」


突き放すような言葉だった。


まるで、人間とヴァンパイアをまったく切り離したような、そんな言葉。

思いきり悲しくなったけど、それでもきゅっと口を結んでから藍川を見上げた。



< 132 / 343 >

この作品をシェア

pagetop