恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「じゃあ、なんで邪魔したの?」

「……」

「本当にあたしと草野くんが上手くいけばいいって思ったなら、わざわざ会話に入ってこなければよかったのに。

いつもみたいに、クールに通り過ぎればよかったのにっ」

「……自分が思ってるほど、出来たヴァンパイアじゃなかったって事だろうな」


困り顔で微笑む藍川は、あくまでも『人間』と『ヴァンパイア』に一線引きたいみたいだった。

……あたしと自分に、一線引きたいみたいだった。


苦しくなった胸が、気持ちを溢れさせてあたしの身体を動かす。


手を伸ばして藍川のネクタイを掴んで、それをぐいっと引っ張った。

20センチほどの距離に近づかせると、藍川は驚いた顔をして眉を潜める。


「『人間』のあたしを、エサだとしか思ってないなら……、なんとも思ってないなら。

今ここで襲えばいいじゃん。ほら、逃げないからどうぞ!」




< 133 / 343 >

この作品をシェア

pagetop