恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「じゃあ、なんで邪魔したの?」
「……」
「本当にあたしと草野くんが上手くいけばいいって思ったなら、わざわざ会話に入ってこなければよかったのに。
いつもみたいに、クールに通り過ぎればよかったのにっ」
「……自分が思ってるほど、出来たヴァンパイアじゃなかったって事だろうな」
困り顔で微笑む藍川は、あくまでも『人間』と『ヴァンパイア』に一線引きたいみたいだった。
……あたしと自分に、一線引きたいみたいだった。
苦しくなった胸が、気持ちを溢れさせてあたしの身体を動かす。
手を伸ばして藍川のネクタイを掴んで、それをぐいっと引っ張った。
20センチほどの距離に近づかせると、藍川は驚いた顔をして眉を潜める。
「『人間』のあたしを、エサだとしか思ってないなら……、なんとも思ってないなら。
今ここで襲えばいいじゃん。ほら、逃げないからどうぞ!」