恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「あたし、自分が何の記憶を失ってるのか、まだ分からない。
だけど、その記憶がすごくすごく大切なモノだってっていうのは、感覚で分かる。
その記憶が……藍川を、求めてる。藍川だけを……」
「……くるみ」
「だから、お願いだから、そんな風にあたしとの間に壁を作ろうとしないで。
そんな風に、遠ざかろうとしないでよ……」
「好きなの……」そう呟いた声が、泣いてた。
何がこんなに悲しいんだろう。
さっきまでつらそうな顔をしていたのは、藍川の方なのに。
想いを告げているうちに、自分の藍川への気持ちの大きさに気付かされて、その大きさに泣きたくなった。
言葉にして、初めて気付く。
あたしは、こんなに……どうしょうもないほどに、
藍川が好きなんだって。