恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


言葉にして、初めて気付く。


何度も何度も……。

過去に、こうして想いを伝えた事を。


『あたし以外に、触らないで……っ』

『あたしは、全部含めて、紫貴が好き―――……』


確かに、何度もそう伝えた。


失われた記憶。

それにかぶせられた殻にひびが入る。


じわじわと広がっていくひび。

そこから漏れ出す、ひどく曖昧でぼんやりとしている記憶が、もどかしくて仕方ない。






< 138 / 343 >

この作品をシェア

pagetop