恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
【第八章】
『本当にくるみには適わないな』
藍川がそう漏らしてあたしを抱き寄せたのは、あの後すぐだった。
……そのおかげで、こんな事になってるわけなんだけど。
「会長と副会長の噂聞いた?!」
「放課後の廊下で抱き合ってたんでしょ?」
「違う違う! キスしてて、しかも副会長が押し倒そうとしてたって」
朝からあたしの周りを飛び交う噂話。
ひそひそと交わされていた会話は、いつの間にかヒートアップしていて、今や指まで指してくる始末。
あたしから見える範囲で、明らかに藍川とあたしの話題をしているグループが4つ。
そしてその4つのかたまりは、おもしろいほどどんどん巨大化していく。
っていうか!
なんであたしが襲ったみたいになってるの?!
告白したのはあたしからだけど、抱き寄せてキスしたのは……キス、じゃないか。
唇の傷に舌を這わせたのは、藍川なのに!!