恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
大体、日が悪かった。
よりによって、今日は朝から校門前に立っての挨拶運動初日なのに。
初日ってだけで、登校してくる生徒からは結構視線を集めたりするのに、それに加えて昨日の噂……。
……そして、なにより。
左腕につけた腕章を触りながら、隣に立つ藍川をさりげなく見上げてみる。
いつもはサボってばっかのくせに、なんで今日に限って参加するかな……。
生徒会役員と同じように、左腕に腕章をつけた藍川は、背筋をぴっと伸ばして登校してくる生徒を眺めていた。
そして、その視線をあたしに落とす。
「どうかしたか?」
「……別に。ただ見てただけ。いいでしょ、藍川だってしょっちゅうあたしの事じっと見たりするんだから」
昨日の告白が頭をかすめたりするせいで、急にドキドキし始める心臓。
そのドキドキに押し出されるように、可愛げない言葉がポンポンと飛び出す。
そんなあたしに、藍川はくすりと笑って。
そして、長い手を伸ばしてあたしの首に触れた。