恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
「ドキドキしてる。何に緊張してるんだ?」
微笑みながら聞いてくる藍川は、まるで答えが分かってるみたいだった。
自分が、このドキドキの原因だって。
「別に緊張なんか……っていうか、手、……」
登校してくる生徒から送られてくる視線が痛くて言うと、藍川は一瞬だけ校門に視線を移して……、またあたしを見る。
「これぐらいなんでもないだろ。
……昨日の事が噂になってるなら、俺たちが付き合ってるって事ぐらいもう周知されてる」
「なんで知って……」
そう言いかけてから口を閉じる。
周りでされるひそひそ話が、あたしに聞こえて藍川に聞こえないハズがない。
ひそひそっていうのもどうかと思うほどのボリュームで、指まで指されてるんだから。
いくら藍川がそういう事に感心がなくたって、勝手に耳に入り込んでくるに決まってる。