恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―
それに、藍川の聴力は、多分……。
以前、初めて一緒に帰った時。
岸田くんの言葉が聞こえたって話していたのを思い出す。
あの時から不思議に思ってたけど……藍川の、っていうか、ヴァンパイアの聴力は人間より優れてるんだと思う。
「くるみに聞こえる事は、たいがい耳に入ってくるから」
「……人より少し耳がいいから?」
そう聞いたあたしに、藍川は微笑んでから小さく頷いた。
それを見て、少し安心する。
ヴァンパイアだから聴力が人間離れしてるって事に安心したんじゃない。
藍川が、誤魔化さなかった事に、だ。
今まで微笑みで答えを誤魔化すことはあった。
微笑んで何も答えないから、あたしが勝手に判断した事なら何度もあったけど……。
こんな風にはっきりと答えをくれた事はなかったから。
だから、あたしに気を許してくれたみたいに思えて、胸の奥がじん、とするほど嬉しくなってしまう。
……内容がちょっとアレだけど、まぁ、そこは置いておいて。