恋愛ラビリンス―愛しのヴァンパイア―


「突然申し訳ありません。私は元帥(げんすい)の孫娘、霧島杏子(きりしまあんず)と申します」


藍川は、頭を下げたまま言う杏子さんを見下ろして……そして、しばらくそうした後、やっと声をかけた。


「元帥の孫娘がなんの用ですか」


……元帥って何のことなんだろう。

そんな疑問が湧いたけど、ここで質問するのはまずい気がして、そのまま2人の会話に耳を黙って聞く。


周りの生徒達は、あたし達を気にしながらも立ち止まる事はできずに校舎に入っていく。


「近々、おじい様が紫貴様とお話があるそうで、そのご報告に参りました」


そう言った杏子さんに、藍川はふっと鼻で笑う。


「偵察、の間違いでしょう。俺の様子を伺って来いって命じられてきたんでしょう?

……ヴァンパイア界の異端児が、何か問題を起こしていないか」




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